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欧州リーグでの多国籍化は顕著だ。例えば、2017-18チャンピオンズリーグ決勝のレアル・マドリー対リバープール戦。レアルの先発にスペイン人選手は3人、リバープールの先発にイギリス人選手は3人しかいなかった。
スタメンの過半数を外国籍の選手が占める。そのような光景は現代サッカーにおいて当たり前のことになっている。
だが、一昔前は違った。多くのリーグで1チームにつき出場できる外国籍選手は3人までと限られていたからだ。
何故このように変わってしまったのか? それには20年以上前に起きた一つの判決が大きく関係してくる。
1995年12月に欧州司法裁判所で下されたボスマン判決だ。この判決以降、EU加盟国籍所有者のEU内での行き来が自由になったのだ。
今回は、このボスマン判決について詳しくお伝えしたい。
ボスマン判決
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現在、欧州主要リーグで先発メンバーの過半数が外国籍選手で埋まることはそう珍しくない。それには一人の選手が起こした行動が大きく関与する。
ジャン=マルク・ボスマン(上写真)というベルギー人プレーヤーだ。彼はベルギーリーグ2部でプレーする選手だった。初めに言っておくが、彼は選手として決してトップレベルではなかった。
何故、そんな彼が世界のサッカー界をを大きく揺るがすことになったのか?
それは移籍トラブルがきっかけだった。
1990年、ベルギー2部リーグのクラブとの契約が終了したボスマン。その後、彼はフランスの2部リーグへ移籍することで話がまとまっていた。
しかし、ここで問題が起こる。所有権を持つベルギー2部のチームがこれを許さなかったのだ。
今では信じられないことだが、選手の所有権はこの時代、契約が切れたチームがまだ持つことができたのだ。しかもこのチームはボスマンの移籍を阻止しただけでなく、自分たちのチームに受け入れることもしなかったのだ。
つまり、ボスマンはプレーする場を失ったのだ。これにより彼は引退せざるを得なかった。
契約が切れたのに前所属チームが自分の所有権を持つのはおかしいと感じたボスマンはベルギー国内の裁判所にて訴えを起こす。そして、勝訴した。
だが、これは序章に過ぎなかった。
次にボスマンが起こした行動。それは、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)に対して欧州司法裁判所で訴えたのだった。
訴えた内容は次の2点
- クラブとの契約が完全に終了した選手の所有権を、クラブは主張できない(契約が終了した時点で移籍が自由化される)
- EU域内であればEU加盟国籍所有者の就労は制限されないとしたEUの労働規約を、プロサッカー選手にも適用するべきである
当時、多くの人がフリートランスファーは可能性があるかもしれないが、EU内の行き来を認める可能性はほぼゼロだと思った。そうなればサッカー界の形態が崩壊しかねないと考えていたからだ。
お金があるチームはどんどん有能な外国籍選手を獲得する。そうなれば、同じリーグ内で上位と下位のチーム間に大きな戦力の差が生じる。多くの外国籍の選手を受け入れれば、自国選手のレベル低下にも繋がりかねない。
だが、判決は衝撃的なものだった。1995年12月、欧州裁判所は上記の2点を完全に認めたのだ。
現在、たくさんの外国籍選手(EU加盟国籍所有者)が自由に欧州リーグを行き来できるのは20年以上前に出されたこの判決によるものである。
尚、ボスマンはプロとしてピッチに立つことは二度となかった。この訴訟のため、どこのクラブも何か問題を起こすのではと獲得を敬遠したからだ。
選手としては思うような結果を残せなかったボスマン。しかし、サッカーの移籍市場にこれ以上ない革命を起こしたことは確かだ。彼の名は、今後も長く語り継がれることだろう。
プレミアでイングランド人選手ゼロ
ここからはボスマン判決の余波を。
2009−10シーズンのプレミアリーグ・ポーツマス対アーセナル戦でプレミア初の出来事が。なんと両チームのスタメンにイングランド人選手がゼロだったのだ。
試合終盤にイングランド人選手が交代で出場するまでは全員外国人だった。地元の人たちはどういう気持ちで試合を見ていたのだろうか?
因みにプレミアリーグで初めてスタメンを外国籍選手のみで固めたチームはチェルシー。1999年12月に行われたサウサンプトン戦での出来事だった。ボスマン判決からは、まだ4年しか経っていなかった。
セリエAでイタリア人ゼロ
セリエAでスタメンにイタリア人ゼロは2015-16のインテル対ウヴィネーゼ戦で起こった。76分にイタリア人選手が交代で入るまでピッチ上には外国籍の選手しかいなかった。尚、この試合では当時インテルに所属していた長友佑都が先発フル出場している。
リーガ・エルパニョーラのセビージャ
リーガ・エスパニョーラでもボスマン判決の余波が。両チームとまではいかないが、セビージャがスタメン全員外国籍選手で固めたことがあった。
その試合は2016-17シーズンのエイバル対セビージャ戦。地元意識が強いスペイン人はこの試合をどういう思いで見ていたのだろうか?
尚、この試合は日本人にとっても注目のカードであった。当時、エイバルには乾、セビージャには清武が所属していたからだ。乾はベンチ外だったが、清武は先発出場しアシストも決めている。