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ロシアワールドカップに16選手も送り出した奇跡の街パリ

バンリュー フランス代表

奇跡の街パリ

前回「フランス代表と移民文化」でお伝えした通り、フランスは多くの移民を受け入れた。移民の多くはパリ、マルセイユ、リヨンなどの大都市周辺に定住するようになった。
その中でも、とりわけ多くの移民が住んでいるのがパリ周辺だ。フランスへやってきた移民の38%はパリ周辺に住んでいるというデータもある。
そして、パリは現代サッカーにおいて奇跡的な数字を残すことになる。ロシアワールドカップ一大会のみでパリ出身の選手が、なんと16人もいたのだ。

バンリュー

バンリュー

パリ出身のサッカー選手を語る上で外せない地区がある。それはバンリュー(Banlieues)だ。多くの移民が住む地区でも知られる”Banlieues”はフランス語で直訳すれば”郊外”を意味する。
上の写真を見ていただきたい。バンリューはちょうど青色のエリア。パリの中心地を取り囲むように出来ている。

ここバンリューは度々問題が起こる地区としても知られている。失業率が高く、暴動なども多い。犯罪率も他の地域と比べて高い。
だが、バンリューにあるのは暗いニュースだけではない。明るいニュースもある。それは、優秀なフットボーラーを多数輩出していることだ。

一大会で16人のワールドカップ戦士

バンリュー

2002年以降、パリ出身のワールドカップ選手は右肩上がりで増え続けている。特に2006年以降はコンスタントに10選手以上送り出している。2018年に至っては、16選手も送り出した。
上の図を見て頂きたい。赤い丸はワールドカップに出た選手の出身地区だ。この狭い地区だけ16選手も選ばれたとは驚きだ。
その中でも特に目立つ地域がある。それがバンリューだ。バンリューだけでワールドカッププレーヤーが9人も出ている。まさに奇跡の地区と呼んでも良いだろう。

優勝メンバーのうち8人はパリ出身

バンリュー フランス代表

ここに驚くべきデータがある。ワールドカップで優勝したフランス代表メンバー23人のうち、実に8選手がパリ出身だったのだ。

エムバペ、カンテ、ポグバ、アレオラ、キャンペンベ、エンゾンジ、メンディ、マトゥイディと錚々たるメンバーだ。

単純計算で優勝メンバーの3人に1人がパリ出身ということになる。ここまで狭い地域でワールドカップ優勝メンバーを多数輩出するのは稀なことだろう。

今大会で世界的に注目を浴びたエムバペ。彼はバンリュー出身だ。エムバペの父はカメルーン人、母はアルジェリア人で共に移民だ。
バンリューで育ち、クレールフォンテーヌ国立研究所の下で育成されたエムバペは、ここ数十年のフランスサッカー界を象徴する存在と言っても過言ではないだろう。

国外の代表チームを選ぶ選手たち

多くの有能な人材を輩出するパリ。ここで大きな問題が出てくる。いくら有能なプレーヤーであっても、周りにより有能なプレーヤーがいたら代表チームに選ばれないのだ。
ワールドカップに出場するのはサッカー選手の夢。その登録メンバーには23人という制限がある。つまり、多くの有能な選手を輩出するフランスでは、優れたプレーヤーでもワールドカップでプレーできない可能性が他の国と比べて高いのだ。

そこで出てくる案、それはフランス以外の代表チームでプレーすることだ。「生まれた育った国以外の代表チームでプレー」でお伝えした通り、FIFAには出生地に関する規定がある。
その規定には、両親や祖父母が他の国のルーツを持っている場合、その国の代表チームでプレーできると記されている。

パリ出身のワールドカップ選手

ロシアワールドカップに出場したパリ出身の選手を表すと上の図のようになる。パリからはフランス代表だけでなく、ポルトガル代表、チュニジア代表、モロッコ代表、セネガル代表の選手が出ている。フランス代表以外を選択した選手は、祖先のルーツをもとにその国の代表を選んだということになる。
ワールドカップのグループリーグで日本と対戦したセネガル代表。実は、セネガル代表メンバーの中にもパリ出身者はいた。その数、なんと4人。

今年世界を賑わせたワールドカップ。一部の選手にとっては、夢の舞台に立つためにどの代表チームを選ぶかなど様々な葛藤があったはずだ。
移民文化、そしてクレールフォンテーヌ国立研究所という育成システムは今後フランス代表だけでなく、多くの代表チームにも影響力を及ぼすことになるかもしれない。