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ベトナム代表の真実|これを見れば試合を2倍楽しめる

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ドキュメンタリー番組

少し前の話なるが2018年2月にNHK・BS1にてベトナムサッカーに関するドキュメンタリー番組をやっていた。

番組のタイトルは「団結こそが勝利への鍵~ベトナム 男子サッカー~」。

内容は東京オリンピックを目指す若きベトナムU23代表を特集したもの。

既にご存知の方も多いと思うが、ベトナムは今、空前のサッカーブーム。特に若い世代の台頭が目立つ。アジアカップ2019でもU23代表から多くの選手が選ばれている。

そのベトナム代表はアジアカップ準々決勝で日本代表と対戦する。

改めて番組を見返すと、そこには24日の試合前に知っておくべき情報がたくさんあった。これを見たら、試合に対する姿勢も変わってくるはず。

今回は、番組内で特に気になった情報をまとめてみた。

テクニック

ベトナム人選手は足先が器用でテクニックがある。

ベトナムのA代表&U23代表を兼任する韓国人監督のパク・カンソがそのことについて語っていた。

「ベトナムの選手たちは戦術の理解力は劣るが、テクニックの面では韓国の選手にも負けていない」

なぜ、今までワールドカップにも出たことがないベトナム人はそんなに高いテクニックを持っているのか?

そにはベトナムの伝統的スポーツであるダーカウが関係している。ダーカウとはバトミントンのシャトルのようなものを足で蹴るスポーツ。小さい頃から慣れ親しんでいるダーカウの影響もあり、ベトナム人は足先が非常に器用なのだ。

サッカーが人気スポーツになった今、その技術がサッカーコートの中でも活かされているということだ。

因みにベトナム代表のパク・カンソ監督は、2002年の日韓ワールドカップでヒディング監督の右腕として韓国代表をサポートし、チームのベスト4進出に貢献した人物だ。

ベトナム人の体格

足先の技術に優れるベトナム人選手。なぜ、そんな彼らが今まで国際舞台で活躍できなかったのか?

その理由の一つにベトナム人の華奢で小柄な体型が挙げられる。

ベトナム人男性の平均身長は162.1cmで世界で4番目に低いのだ(因みに日本人男性は170.7cm)。

また、ベトナム料理もサッカーをする上で大きく関係してくる。

サッカー選手は当たり負けしないために強靭な肉体が求められる。そのため、食事ではカロリーやタンパク質の摂取が必要。

しかし、ベトナム料理は野菜たっぷりで油を控えた料理が主流。ヘルシーフードとして世界的にも有名な位だ。それが故にベトナム人は華奢な体格の人が多い。

それは肥満率にも表れている。アメリカの肥満率が36.2%、日本が4.3%であるのに対し、ベトナムはわずか2.1%だ。

生活をする上では良い数字だが、サッカーをする上ではマイナスに作用することもある。

番組の中では、今大会左サイドバックとして活躍しているドアン・バン・ハウ(背番号5)も食事のことについて語っていた。監督からは、とにかく食事の量を増やして体重を増やすように指示が出ているそうだ。

そのこともあり、近年のベトナム人選手はカロリーやタンパク質を含む食事を取り、肉体改造にも積極的に取り組んでいるようだ。

24日の日本代表対ベトナム戦ではベトナム代表選手のフィジカルにも注目だ。



国際舞台

近年成長著しいベトナム代表。それは若い世代を中心に結果としても出てきている。

国際大会での主な実績は下記の通り。

  • AFC U-19選手権(2016年) → 3位
  • FIFA U-20ワールドカップ(2017年) → 初出場(※1
  • AFC U-23選手権(2018年) → 準優勝(※2
  • アジア競技大会(2018年) → ベスト4(※3

※1
1分2敗でグループリーグ敗退。

成績: ニュージランド(0−0)、フランス(0−4)、ホンジュラス(0−2)

グループリーグ敗退に終わったが、大会で東南アジア勢として初の勝ち点1を獲得。

※2
決勝戦ではウズベキスタンに1−2で敗戦。因みに、この大会でウズベキスタンは準々決勝で日本を4−0で下している。

※3
U23代表で臨んだベトナム代表はグループリーグでU21日本代表と対戦。1−0で勝利したベトナムはグループリーグを首位通過している。

戦争とサッカー

近年、著しい成長を遂げているベトナムサッカー。では、なぜ今までベトナム代表は国際舞台に立てなかったのか?

前述のように華奢な体格等、理由は様々だろう。

しかし、その中の一つにある大きな理由が挙げられる。

それは戦争だ。

ベトナムは以前、北と南に分かれて20年もの間(1955〜1975)戦争をしていた。その間、ベトナム代表はオリンピック予選にもワールドカップ予選にも出場することができず、完全に国際舞台から遠ざかっていたのだ。

戦争後も北と南で感情的なしこりは大きく残った。

だが、あることがきっかけでサッカー界に変化が訪れる。それは、1995年に行われた東南アジア競技大会だ。

東南アジア競技大会とは、東南アジアのオリンピックとも言われ2年に一度開催される大会。

この大会で国際舞台に復帰して間もないベトナム代表は初の決勝進出を決める。決勝戦ではタイ代表に0−4で敗れたものの、この快進撃がきっかけで北と南は分け隔てなく一緒に応援するようになった。そして、この盛り上がりが今に繋がっているのだ。

グエン・コン・フオン

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ドキュメンタリー番組内でとりわけ大きく取り上げられたのがグエン・コン・フオンという選手。現在23歳の彼はベトナム代表の絶対的エースだ。

アジアカップ2019では10番をつけている。

実は彼、日本とは深いつながりがある。

2016年にJ2の水戸ホーリーホックでプレーしていたのだ。しかし、5試合0得点と結果を残せず、その年限りでチームを後にする。

日本でグエン・コン・フオンが痛感したこと、それは自分のフィジカルの弱さである。テクニックはあるものの、体格差で格段に劣っていたのだ。

彼はインタビューの中で日本でのプレーを振り返る。ある試合で相手選手に飛ばされたら、直後に交代させられた。その時、いくらテクニックがあっても勝てないと感じたそうだ。

その後、ベトナムに戻った彼は強靭な肉体を手に入れるためフィジカルトレーニングを重点的に行なった。番組の中では50kgのベンチプレスを10回、それを5セット続ける彼の姿が。

24日の日本戦。この対戦を一番楽しみにしているのはグエン・コン・フオンかもしれない。


育成スクール

そんなグエン・コン・フオンが所属するチームはホアンアイン・ザライFC。ベトナムで一番の人気を誇るチームだ。

このチームの育成施設がすごい。

クラブハウスがある敷地内にはHAGLアーセナルJMGアカデミーと呼ばれる全寮制のサッカースクールがある。

アーセナルとはあのプレミアリーグのアーセナルのことでこの施設ではヨーロッパ式のサッカーを教えている。昨シーズンまでアーセナルの監督を務めていてアーセン・ベンゲルもこの施設を訪れたことがあるそうだ。

施設内にはサッカーコート5面の他、プールや寮、食堂なども完備されている。

スクールにはベトナム全土から選抜された11〜19歳の若い優秀な選手が入寮する。

グエン・コン・フオンは、このアカデミーの一期生。その時は7,000人の中から18人しか選ばれなかったそうだ。その翌年に関しては20,000人の中から選ばれたのはわずか9人。かなり狭き門となっている。

このアカデミーの生徒は日中は市内の学校に行き、夜には敷地内で更にサッカーに関する授業を英語、フランス語で受けるそうだ。

入学金や授業料は無料。サッカーシューズなどの用具も全て無料で提供されるそうだ。

生徒の大半は田舎の貧しい農村地域出身者が多いそうだ。

グエン・コン・フオンもその一人でアカデミーの試験を受ける際、試験会場まで行く交通費が払えなかった両親は親戚をはじめ色んな所からお金を借りたそうだ。

その甲斐もあり、グエン・コン・フオンは13歳の時にこのアカデミーに入寮することができた。

因みに幼少期貧しかったグエン・コン・フオンは、サッカーボールを買うお金がなかったので、バナナの葉っぱで縛った藁のボールでサッカーをしていたそうだ。

お金

このドキュメンタリー番組で最も衝撃を受けた情報はお金に関することだった。

ベトナム代表のエースとして活躍するグエン・コン・フオンの年俸は150万円だそうだ。

物価の差などもあるだろう。だが、絶対的な人気を誇る選手としての額と考えると驚きを隠せなかった。

人気No1の選手で150万円なので、その他の選手の年俸はもっと安いものになるだろう。


Jリーグへのチャンス

24日に行われる日本代表対ベトナム戦。この試合はベトナム代表選手にとっては自分を売り出すのにまたとないチャンスになりそうだ。

ベトナムはJリーグ提携国の一つだからだ。

Jリーグ提携国とは

タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、イラン、マレーシア、カタール

のことを示し、この国の出身選手であれば一人までなら外国人選手としてカウントされない。

既にタイからはチャナティップ、ティーラシンなどがこの枠でJリーグにやってきて結果を残している。

日本戦で良いプレーをする選手がいればJリーグ関係者の目に止まる可能性もある。

前述のようにベトナムで人気No1の選手グエン・コン・フオンでさえ年俸は150万円。

ベトナムの有望な選手はJリーグに移籍することができれば、レベル面だけでなく生活面でも大きなアドバンテージを得ることができるだろう。

色んな意味で24日のアジアカップ準々決勝の日本代表対ベトナム戦は目が離せない試合になりそうだ。